* another sky *
「うるせーよ、航太。
聞こえてるっちゅーの。」
「お前なんか、選ばねぇよっ。」
「何だよ、自分だけ幸せだからって。
おまえ、俺たちのこと馬鹿にしてると、どうなるかわかってるんだろうなっ。」
「そーだよ。余計なこと言うと…。」
「何だよ。
ばらされて困ることなんかないよっ。」
「へぇー…。いいんだって。」
佐藤君は紺ちゃんと視線を交わしながら、含み笑いをする。
「玲ちゃんも聞きたいだろ?」
「え?」
「航太、隙がなさそうに見えて、玲ちゃんには弱いからな。」
佐藤君も紺ちゃんも。
何故か、顔を見合って笑い出す。
「え、何が可笑しいの?」
麻友理が横に座っている佐藤君の腕をつかんで問いかけた。
「いや、航太だって、俺たちと変わりないって。」
「そっ。
航太は玲ちゃんのこと、ずっと片思いしてたんだもんなぁ。」
え、―――?
航太が……?
私に、片思い……?
目を丸くする私に、紺ちゃんが穏やかに口火を切る。
「今は玲ちゃんと幸せそうにしてるけど、航太にもヤキモキした時代があったんだよ。」
「ええ…?」
「いやね、航太のバイト先に、玲ちゃんが新しく入ってきた時…。」
「ちょっ、佐藤っ!」
焦った様子の航太が、大声で遮った。
うわ、―――。
こんな焦った航太、見たことないんだけど…。
私はびっくりして、航太を見上げた。