* another sky *
大学に入学して、まだ間もない頃かな。
とあるデザイン事務所にアルバイトとして入ることになった。
尊敬する教授の紹介で、働かせてもらうことになって。
「雑務は多いけど、きっと勉強になるから。」
空間プロデュースを得意とする事務所で、少しでも実践を学びたいと思っていた私には、有り難い申し出だった。
私は今もここでアルバイトを続けている。
航太とは、部署もフロアも違ったから、それまで話したことも、なくて…。
そういえば…。
顔を合わせることも、あんまりなかったように、思う。
航太を初めて意識したのは、何かの打ち上げの時。
一次会が終わって帰ろうとする私の手を、酔っ払った八城さんが離してくれなかったんだ。
八城さんは私の直属の上司で、その日はかなり酔っ払っていた。
さわやかなイケメンさんで、不慣れな私に丁寧に仕事を教えてくれる八城さん。
いつも笑顔で「玲ちゃん。」と呼んでくれて。
ほんと優しいし、仕事も出来るし、素敵だなってちょっぴり思っていたのに…。
「玲ちゃんも行くよね?」
八城さんは店の外に出るなり、私の手を掴んで離してくれない。
しかも、酔っぱらってるせいか、加減なく強く掴まれて、泣きそうになっていた。