* another sky *

「よーし、二次会、カラオケ行こうぜー。」


「八城さんっ。私、行かないです。
離してください、痛いですよ!」


「何だよ、八城ぉ。バイトいじめんなよ。」


「八城君、吉野さんお気に入りだもんねぇ。」


口々に言いながら、みんな笑って誰も相手にしてくれない。

それぐらい、いつものことだったらしい。

でも田舎から出てきた私にはかわす余裕もなかったし、終電の時間も気になって焦っていた。


「じゃ、カラオケ行くかーっ。」


みんなが流れ始めると、八城さんはいっそう強く私の手を引っ張った。


「八城さん、離してくださいって。」


「玲ちゃんも行くぞぉ。」


八城さんは前方を歩くみんなに声を張り上げた。


「……っ。」


「玲ちゃん、ほら行こうよ。なっ。」


「八城さんっ。行かないですって。

離してくださいって。」


なかば引きずられるように、連れて行かれそうになる。


どうしよう…。

とにかくこの手、放してほしいっ。


人はお酒が入るとこんなにも変わるんだ、って。

普段、優しい八城さんの豹変ぶりに、もう怖くて泣きそうで。


顔だけ出して、タクシーで帰る…?


そう、諦めかけていた時だった。
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