* another sky *
「俺、玲にしか優しくないよ。」
「えっ?」
「そこらへん、伝わってるって思ってたんだけどなぁ。
ま、いいか。
俺、結構、言葉で表してきたつもりだったんだけど。」
「航太?」
「玲が大切に思う人は、俺にとっても大切。
だけど、みんなに優しくしてきたつもりは、ないんだけどね。」
「ご、ごめん…。」
「でも、玲がそんなに恋愛経験ないって、知れてよかったー。」
「ええっ?」
「俺、玲が計算した上でその可愛さなら…、ちょっとショック。」
「え? どういうこと?
わかんないんだけど。」
「わかんなくていいよ。」
「え、だって…。
わかんないんだもんっ。」
「わかんなくていいの。
玲がわかるように、俺がもっと態度で示すから。」
「航太……?」
「玲のこと、好きだよ。
玲にしか、俺、優しくないんだよ。
玲だけしか、見えてないから。
わかった?」
「わ、わかっ…。」
最後まで言い切らないうちに、航太の声が重なった。
「今日は、覚悟しろよ。」
―――――??
「朝まで寝かせないからなっ。」
瞬間湯沸かし器のように赤くなった私の頭を、航太はポンポンと叩く。
「俺がどれだけ玲が好きなのか…。
じっくり、たっぷり、わからせてやる。」
――――――!!
空には、細く、絵に描いたような美しい三日月が、輝いていた。
繋いだ手のひらをぎゅっと強く握りしめる。
「愛してるよ、玲。」
すごく、すごく幸せだった。
いつまでも、こんな日が続くと信じていた。