Enchante ~あなたに逢えてよかった~
事実上の休養を強いられて帰国を余儀なくされた澤田を慮って
あれこれと手配してくれたのは懐かしい友人達だった。
都内にいるとマスコミが何かと煩いだろうからと
地方都市でしばらく暮すことを提案して
その手筈を早々に整えてくれたのは三木真里と糸居幸治。
二人は澤田と共に中学高校の部活動で汗と涙を
流した同志であり親友だった。
澤田は高2の秋から渡米してしまったが、それ以降も
親交は途切れることがなく、三木と糸居は澤田を応援し続けてきた。
その二人と一緒にこれからしばらく暮らすことになる土地へと
向かっているのだった。
「誰かの言葉じゃないけれど、いいじゃない。
神様がくれた休みだと思えばさ」
軽やかなハンドル捌きで大型車の間を縫うように車を走らせながら
三木が言った。
神様がくれた休み、か。
現実主義だと公言するわりにどこかロマンティストな友人の
上手い物言いに澤田は苦笑した。
「そうだな・・・」
澤田は中学時代、肩と肘を痛め治療と休養した時のことを思い出した。