Enchante ~あなたに逢えてよかった~
そのまま言葉もなく、二人は互いを抱きしめた。
触れ合ったところからじんわりと熱が高まり
融けて合わさっていくような感覚が心地よくて
離れ難い思いでいた二人は、その場から動こうとはしなかった。


時折、どちらからともなく視線を合わせ
その度に、くちづけを交わした。
軽やかに啄ばむように触れ合った後は
しっとりと深く濃厚に触れ合い、また軽やかなそれに戻る。
とめどなく溢れてくる愛しさを伝えあうかのように
そうするしか手段がないかのように
二人はあきることなく何度もキスを交わした。


どのくらいそうしていただろうか。
小窓から差し込む陽射しが夕日のそれに気づいた絢子は
「あっちに行かない?」と澤田を促した。


リビングのソファーに並んで腰を下ろしても
繋いだままの手を離すことはなく、見つめ合ってまたくちづけを交わした。
話たいことはたくさんあったはずなのに、と絢子はくちづけたまま
ふぅと短く息を吐いた。
そんな絢子の唇の上で「どうした?」と吐息だけで澤田が囁いた。


「キスばっかり・・・ね」


澤田から薄紙一枚ほど唇を離した絢子が呟いた。


「もの足りない?」


離された澤田の唇は今度は絢子の首筋を
艶かしく辿っていく。


「ん・・・そうじゃなくて・・・あっ」


奔放に動き始めた澤田の唇は絢子の胸元を擽っていた。



「違っ・・・駿。ねえ待っ・・・あ」


悪戯な唇は絢子が何をどうしても止まることはなく
手指と共に彼女の身体を隈なく辿り、煽る。
与えられる甘やかな快感に堪えきれなくなった絢子は
艶かしい声を上げ、身悶えしながら澤田を求めた。


「駿  私の・・・駿」
「絢子」


何度も何度も互いを呼び合い緩やかに高め合いながら
深く繋がって溶け合った。

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