Enchante ~あなたに逢えてよかった~
「産みなさいよ!何を悩む事があるの?!」

「でも・・・」

「赤ちゃん出来て、嬉しかったんでしょ?幸せだと思ったんでしょ?
母親にそれほど愛されて生まれてくるんだもの、問題ないじゃないの!」

「それは そうなんだけど」

「今どき、シングルマザーは珍しくないでしょう?
学校でもどのクラスにも必ず片親の子どもがいるって時代よ?
しかも一人や二人じゃない。もう母子や父子家庭は特別なことじゃないわ」

「うん」

「それにさ、子どもが父親のことを知りたいって言い出したら
本当の事を話せばいいのよ。不倫とか行きずりでできた子じゃないのよ?
素敵な恋をして、愛し合って出来た奇跡の子なんだから」

「奇跡の子・・・」

「そうよ。アンタはこの先二度と妊娠できないかもしれないって
医者に言われてたのに、できたのよ?奇跡意外の何ものでもない。
それを産まないなんて誰が許しても、アタシが許さないわ!」

「キャサリン」


あぁ、それに佑ちゃんもね、とウインクをしたキャサリンが
絢子の肩に腕を回した。


「大丈夫よ。私たちがついてる。足りない分の父親の愛情は
私と佑ちゃんが注いで埋める。いつでも父親の代わりになってあげる」


どっちかっていうと母親代わりのほうがいいけどね。アタシは、と
キャサリンは悪戯っぽく笑った。
その後、大和に電話をして報告をしたら喜び勇んで
すぐに絢子の家へ駆けつけてきた。
階段の上り下りは妊婦には危ないから寝室を一階にしろだの
ベビーベッドは何処に置こうかだの
まるで自分が夫であり父親であるかの如く気を揉む有様に
絢子とキャサリンは顔を見合わせて笑った。



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