Enchante ~あなたに逢えてよかった~
「そういう事なら先輩が用心棒でも何でもすればいいじゃないですか」
「ボクだってそうしたいのはヤマヤマなんですよ?
でも姪っ子を預かっていますからねえ。そうもいかない」
その話は昨夜、聞かされた。
父親とも兄とも言えない微妙かつ不思議なこの感覚を言葉にするなら
萌えだろうか、と笑った大和に、三木と糸居は分かる分かると
しきりに頷いていた。
・・・萌えとは何だ?萌えとは。わからん、と
盛り上がる3人を横目に澤田だけは眉間に皺を刻んだ。
「いや~本当に残念ですよ・・・」と
大和は大げさに肩を落として見せたが
澤田は自分には無関係なことといわんばかりに冷たく言い放った。
「とにかく!今日の話は無かった事にしてください。
賃貸の物件に空きがでるまでホテル住まいで構いませんから」
しかし大和も諦め悪く「まぁまぁ、そういわずに」と食い下がった。
「一度家を見てみて、彼女に会ってみるくらいいいでしょう?」
「そのお宅に下宿をする気はありませんので、それは無駄だと思いますが」
「またそんなつれない事を。人生の半分は無駄で出来てるんですよ?」
「初めから無駄だとわかってる事はしないのも人生です」
全く君は・・・と苦笑いした大和が宥めるように言った。
「はいはい。でももう着いちゃいますから、あきらめて下さいね。
久しぶりに会った先輩の顔を立てると思って」