Enchante ~あなたに逢えてよかった~
「でもね?私と澤田さんは昨日初めて会ったばかりなのよ?気に入るも何も・・・」
「一目惚れってやつなんじゃないの?相当入れ込んでるように見えるよ?」
「信じられない」
「ま、貴女はそうだろうけど、僕たちには分かる。あいつ、分かりやすいんだよね」
どう答えていいのかわからない絢子は瞬きを繰り返して「そんな・・・困るわ」 と口元に手をあてた。
「困る?・・・そうかな?」
「そうよ」
「澤田はいい男でしょう?」
「え?」
三木の問いにどう答えるか、一瞬 絢子は迷った。
頷けば三木の思惑に嵌る。それはわかっていたけれど
絢子は否とはいえなかった。
主観的にはいうまでもなく客観的に見ても澤田はいい男だ。
否と答える理由が見つからない。わざとらしい否定をしても
状況を悪くするだけだ。絢子は黙って頷いた。
三木はふふふ、と意味深な微笑を浮かべ、窓辺へと歩み寄ると
絢子へと向きなおった。
「学生の頃から、女性にモテたんだよ。頭もよかったしスポーツもできた。
でも僕らでも呆れるくらいテニス馬鹿でね。流行とか女の子とかには
まるで無関心でさ。ストイックが制服着て歩いているような奴だったから
モテてる自覚も自惚れもまるでなかったし、騒がれても我関せずでね。
とにかくテニステニスの毎日だったんだ。けどそういうところが
かっこいいとかで、告られるのもひっきりなしだったよ。
澤田は一度もOKしたことはなかったけどね。
で、そんなところがまた 更にかっこいい!とかで 騒がれるわけ。
女の子ってわかんないよね。優しくてマメな人がいいって言うわりに
澤田みたいなのもいいっていうんだから」
三木の話を聞きながら絢子は学生時代の澤田の姿が
目に見えるようだと思った。
本人はただ好きなテニスに無我夢中で打ち込んでいるだけで
大人から見れば玩具やゲームに夢中になって食事も忘れる子どもと
大差はない。なのにクールだの硬派だの言われ、王子様的偶像として
祭り上げられ困惑している澤田の姿が。