Enchante ~あなたに逢えてよかった~
「まあ、男の僕たちから見ても澤田はかっこいいと思うからね。
澤田ほどの男から言い寄られて拒める女性はそう多くない」

「でしょうね」


絢子は今度は素直に頷いた。


「貴女も例に漏れず、だ」

「それは!」

「おっと、否定したってダメだよ?困るとは言ったけど
嫌だとは言わなかったのが証拠」



あ、と絶句した絢子は唇を噛んで眉根を寄せた。
確かに 困るけど嫌じゃない。
本音をズバリ突かれたようでなんともバツが悪かった。
昨日、澤田との「はじめまして」の瞬間に絢子もまた
甘やかな予感を感じていたのだった。昨夜、大和から電話で
急遽の引越しを頼まれたとき、心が浮き立つような高揚に包まれた。
そしてそれは今もまだ絢子の身体に纏わり付いたままだった。
けれど・・・


もう恋はしない―― 


そう決めて心を閉ざし目を背け、恋情を遠ざけてきたはずだった絢子は
それが一瞬にして覆りそうになった昨日に動揺していた。



「でも悪いけど、アナタはダメだ。澤田に相応しくない」



そんな事は分かっている。言われなくても、と 絢子は心で呟いた。
澤田と自分とでは生きる世界が違いすぎる。
平凡な自分は遠くから眺めているのが分相応。
それに・・・
それだけじゃない理由も自分にはあると絢子は両手を握り締めた。


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