Enchante ~あなたに逢えてよかった~
「誤解のないように言わせて貰うけど
ルックスとか年齢とかそういうものじゃなくて
アナタの持ってるその雰囲気がいけないんだ。
柔らかくて優しげで・・・男の闘争心を萎えさせてしまう」
本当ならそういう女性こそストイック過ぎる澤田にはぴったりなんだけどね、と
思った本音は言わずに、三木はさらに辛辣な言葉を絢子に浴びせた。
「澤田にしてみたら、貴女のそういう部分に癒しを感じて
惹かれるのだろうけど・・・それって諸刃の刃なんだよね。
一つ間違えたらのめり込み過ぎて癒されるどころか、ただの腑抜け。
牙を抜かれた獅子になっちゃう。
だから貴女をあまり澤田に近づけたくない。近づいて欲しくもない。
腑抜けになられちゃ困るんだよ。澤田は僕らの「夢」なんだ。
ここで終るような奴じゃない。もう一度、あの世界に戻って
戦ってもらわなくちゃならない。そのための休養なのに!
大和先輩ときたら選りにもよってどうしてこんな処に・・・」
ちっ、と小さく舌打ちをして爪をかむ三木を絢子は睨むように見据えて
きっぱりと言い放った。
「心配はいらないわ。そんな事にはならないから」
三木の言うように大和がどうして澤田を自分のところへ連れて来たのかは
分からない。でも今日初めて会った三木に「こんな処」と
蔑まれる筋合いはないし、自分が澤田を腑抜けにするなんて言われるのは
心外だ、と絢子は怒りすら覚えた。
「澤田さんを腑抜けにさせるほどの魅力なんて、私にはないわ」
そうでなければ、人を想い慕う心を閉ざす事にはならなかった。
こんな風に一人で暮らすことにだってならなかった、と絢子は唇を噛んだ。
「どうだか」
短く吐き捨てるように言った三木が絢子との距離を詰めて
彼女の腰に腕を回して力任せに引き寄せた。
「あっ?!」
突然のことに小さく声をあげた絢子に構うことなく
三木はもう片方の手で彼女の顎先を掴むと
彼女が少しでも動いたら触れてしまうほどに唇を近づけ
「ふふん」 と笑った。