Enchante ~あなたに逢えてよかった~
「そう!これだよこれ! こんな事態でも慌てず騒がずの
この気の強さがいい。ますますソソられる」

「年上の人間をからかうものじゃないわ」

「からかってないよ。本当の事を言ったまでさ」


三木は絢子を抱く腕に力を込めて
その腰を一層引き寄せ、身体を密着させて軽く揺すった。
絢子は下腹部に三木の昂ぶりが当たるのをかすかに感じた。



「ほら、分かる?貴女にそそられて、勃っちゃった」

「知らないわ、そんなの。もう放して。大声出すわよ」

「その前に、その口塞ぐよ?・・・キスでね」

「塞がれる前に噛みついてやるわ」

「おっと、それは嫌だな」



「痛いのはキライなんだよ」 と軽やかに笑った三木が両手を離し
絢子の身体を解放した。



「もし澤田が誘惑してきても、今みたいに跳ね除けてもらいたいね」

「澤田さんはこんなこと、しないわ」

「分かってないな。男は誰でも狼なんだよ?羊の皮を被っているけど
何時だって獲物を狙ってる。臨戦態勢さ」


「・・・俺が、何だって?」



タイミングがいいのか悪いのか、澤田が階段を上がって来ていた。



「あ、澤田ー。乾の話は済んだの?」

「ああ。・・・ところで何を話していたんだ?」

「ん?ああ、絢子さんに素敵なお家だねって話てたとこ。
よかったね、澤田。いいトコ見つかって。絢子さんも素敵な人だし」



同じタイミングで自分に向けられた二つの視線に曖昧に微笑んだ絢子は
さっきとは打って変わって穏やかな微笑みを湛えている三木に
心の中で(よく言うわ…)と呆れて呟いた。

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