Enchante ~あなたに逢えてよかった~

そうして始まった高城との交際には
周囲の羨望の眼差しに気恥ずかしさを感じつつも
ほんの少しの優越感を抱かずには居れない絢子だったが
晩熟な彼女ですら拍子抜けするほど
堅く優等生なお付き合いだった。


キス以上の事はせず、毎回、門限より1時間も前に家に送り
きちんと両親に挨拶をする彼の真面目さには
多少の物足りなさを感じずにはいられなかった。
伸吾は自分にセクシャルな魅力を感じないのだろうか、と
不安に思う事もあった。


けれど、そんな彼を誠実だと評し、娘を大切にしてくれているのだと
満足と安堵の微笑を浮かべる両親を見るにつけ
絢子は そうかもしれないと胸が温かくなった。


そして3ヵ月後、二人が初めて食事をしたホテルのバーで
絢子は伸吾からプロポーズをされた。
少し早すぎる気がしないでもなかったが
心が決まるまでの時間に長いも短いもない。



それに伸吾は今年で30歳になる。
企業の後継者としては身を固める適齢期でもあるのだろう。
そんな時に自分と出会い運命を感じてくれたのなら嬉しい。
絢子が はい と答えて伸吾と視線を合わせると 
よかった…と小さく呟いた伸吾の唇が柔らかく重なった。
そのまま絢子は伸吾の腕の中で朝を迎えた。



伸吾の両親からも是非にと望まれ
もちろん絢子の両親に異存などなく
とんとん拍子で話は進んで
プロポーズから半年余りで結婚をした。


誰からも祝福された結婚だった。


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