Enchante ~あなたに逢えてよかった~
「そう」
「はい・・・ そうです」
それは確証のない胸騒ぎだった。
女の…否、妻の感というやつかもしれない。
「夫は会社の近くのホテルに滞在してるんでしたよね?」
「・・そうです」
「どこ?」
「えっ? あぁいつものホテルです」
「そう。なら着替えは、私が届けます」
「いえ!奥様にそんな事をさせたとあっては私が叱られます」
「なら、あなたと一緒に行くわ。それならいいでしょう?」
「しかし・・・」
「もう就業時間はとっくに終っているし出張帰りなんだから
問題はないでしょう?」
「ですが・・・」
「私は妻よ?妻が夫の荷物を届けに行くのに何の不都合があるの?!」
「・・・・・・」
言い返す言葉が無かったのか項垂れて
わかりました、と低く唸るように呟いた秘書と一緒に
夫が滞在しているホテルへ向った。