Enchante ~あなたに逢えてよかった~
澤田の身体に巻き込まれるように抱かれ
激しく過ぎた時間は、まるで嵐の中にいるようだった。
自分に被さる澤田の広い背中が弾む息につられて上下に微かに動く。
その背を撫でながら、着衣のままの言葉も無い性急な求め合いは
性に不慣れで貪欲な十代の頃のようだと絢子は嘲笑した。
「何?」
「ん、何も・・」
「この状況で笑われたら、さすがにへこむ」
「あ!やだ、違うの。そうじゃなくて!」
「じゃあ、何なんだ?」
絢子が思ったままを告げると 「本当だな」 と
澤田も苦く笑って身体を起し素早く衣服を直すと
絢子を抱き上げ歩き始めた。
「澤田くん?!何? どこ行くの?!」
「俺の部屋。汚名返上させてもらう」
今度はゆっくり時間をかけて、と不敵に笑う。
「い、今から?すぐ?」
「もちろん」
「パスタは?」
「晩飯にする」
「そんなぁ・・・私、お腹減ってる・・・」
「もうひと運動すれば、一層食事が美味くなるぞ」
言うや否や、絢子に触れるだけのキスをした澤田は
蠱惑的な笑みを浮かべた。
「ウソでしょう~?!」
「諦めるんだな」
「でも~~」
「今は食欲より・・・こっち」
今度は深く貪るようにくちづけられ
澤田の舌に絢子のそれが淫らに絡め取られた。
一気に熱が上がり身体の芯が蕩け出すようなキスと
その合間に肌が粟立つような低く甘い声で何度も名を呼ばれ
観念した絢子は、自分を抱いたまま
軽やかに階段を登っていく澤田の首に腕を回して
耳元に囁いた。
「お願い、私の部屋にして。ベッド、広いから・・・」