Enchante ~あなたに逢えてよかった~

大和にカマをかけられ、居た堪れなくなった絢子は
お茶の支度をすると行ってそそくさとキッチンへ逃げ込んだ。
その背中を見送った大和は微笑んで澤田に声をかけた。


「楽しくやっているみたいですね」
「ええまあ。おかげさまで」
「それはよかった」


大和は、澤田が何の躊躇いもなく肯定したせいで興味が失せたのか
はたまた最初から興味がないのかは分からないが
すぐに話題を変えた。



「実は今日伺ったのは君の仕事についてなんです」


澤田自身も求人雑誌やネットで仕事を探していたけれど
地元の名士で顔が広い大和にも何かあれば紹介して欲しいと
頼んでいたのだった。


そういうことなら奥で、と澤田は大和をリビングへと誘った。


「ウチの学園の幼稚園で働いてみませんか?」


ソファに腰を下ろすや否や、大和はいきなり本題を切り出した。
余談や前置きの一つや二つ…時には
それ以上になることも珍しくない彼にしては珍しい、と
澤田は一瞬瞠目した。


「俺、保育士の資格は持っていないですよ?」

「いやいや、保育士の仕事をしろといっているのではなくて
その助手・・・とでも言いますかねぇ。教室内での指導は
先生一人でも問題ないのですが、屋外保育や園外保育のときなどは
手が足りなくて困っているのですよ。なので雑務をこなしてもらう
臨時職員ってとこですかね?形態としてはアルバイトになりますが」

「しかし・・・」

「それに先月末で体育指導員が辞めたので、その後任が見つかるまで
君に体育指導を頼みたいと思いまして」


最近の幼稚園は体育や音楽や英語の時間を設けて
専門の講師や指導者を招き、本格的な指導をしているところが多いらしい。


「確かジュニア指導員の資格は持っていましたね?
テニスの技術だけではなく基礎体力のトレーニングなんかも
指導できるのでしょう?それを上手くアレンジして楽しい体操や
遊びにしてくれればいいですよ。大丈夫。君一人で指導することは
ありません。必ず保育士が一緒に居ますから」

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