Enchante ~あなたに逢えてよかった~
「正直、結婚は・・・懲り懲りなのよ」
背骨が軋むような不快感と痛みを感じて
今にもしゃがみこんでしまいそうな自分の身体を
自身の両腕でぎゅっと抱きしめた。
「嘘だと思うなら、大和くんに聞いてみるといいわ。
昨夜だってアナタのことで悩んで彼に相談したのよ?
大和くんは私にとって良き理解者であり、親友でもあり
都合のいい相手でもいてくれる。
あなたとこうなる前は時々慰めてもらったわ」
もちろん嘘だ。大和とは親しくしていても
身体の関係を持ったことはない。でもこう言えば澤田は確実に
自分に幻滅し軽蔑するだろうと思った絢子の切り札だった。
「先輩とのことはわかった」
「そう? じゃあ そろそろ休んでいい?」
「絢子」
「なあに?」
「・・・俺も都合のいい男だったということか?」
「そうね。ある意味、そうだったかもしれない。
あなたが家で暮らすのは3ヶ月か4ヶ月・・・長くて
半年だと大和くんに言われたの。そのくらいなら
もし関係ができちゃっても後腐れが無くていいかなと思ったし」
「でも 一度は拒んだじゃないか」
「あぁあれ?あれは演出。
少しくらい焦らさないとそれっぽい感じが出ないでしょ?
恋愛ごっこにもリアリティって必要よ?」
「もういい!聞きたくない!」
そう言い捨てて絢子の横を足早に擦り抜けて行った澤田は
大和が自分に移した香りを感じる余裕があっただろうかと
大きなため息を落として華子は床にへたりこんだ。
これでいい。
自分を蔑んで憎めば彼は何の迷いも躊躇もなく
戻るべき世界に戻っていける。
だから・・・これでいい。これでよかったはずなのに
例えようのない虚しさと苦しさで
込み上げてくる涙をどうすることもできなくて
絢子は声を殺して泣いた。
止め処なく溢れてくる涙の理由は
優しく誠実な澤田を傷つけてしまった痛みなのか・・・
自身の心の嘆きなのか・・・絢子にはわからなかった。
背骨が軋むような不快感と痛みを感じて
今にもしゃがみこんでしまいそうな自分の身体を
自身の両腕でぎゅっと抱きしめた。
「嘘だと思うなら、大和くんに聞いてみるといいわ。
昨夜だってアナタのことで悩んで彼に相談したのよ?
大和くんは私にとって良き理解者であり、親友でもあり
都合のいい相手でもいてくれる。
あなたとこうなる前は時々慰めてもらったわ」
もちろん嘘だ。大和とは親しくしていても
身体の関係を持ったことはない。でもこう言えば澤田は確実に
自分に幻滅し軽蔑するだろうと思った絢子の切り札だった。
「先輩とのことはわかった」
「そう? じゃあ そろそろ休んでいい?」
「絢子」
「なあに?」
「・・・俺も都合のいい男だったということか?」
「そうね。ある意味、そうだったかもしれない。
あなたが家で暮らすのは3ヶ月か4ヶ月・・・長くて
半年だと大和くんに言われたの。そのくらいなら
もし関係ができちゃっても後腐れが無くていいかなと思ったし」
「でも 一度は拒んだじゃないか」
「あぁあれ?あれは演出。
少しくらい焦らさないとそれっぽい感じが出ないでしょ?
恋愛ごっこにもリアリティって必要よ?」
「もういい!聞きたくない!」
そう言い捨てて絢子の横を足早に擦り抜けて行った澤田は
大和が自分に移した香りを感じる余裕があっただろうかと
大きなため息を落として華子は床にへたりこんだ。
これでいい。
自分を蔑んで憎めば彼は何の迷いも躊躇もなく
戻るべき世界に戻っていける。
だから・・・これでいい。これでよかったはずなのに
例えようのない虚しさと苦しさで
込み上げてくる涙をどうすることもできなくて
絢子は声を殺して泣いた。
止め処なく溢れてくる涙の理由は
優しく誠実な澤田を傷つけてしまった痛みなのか・・・
自身の心の嘆きなのか・・・絢子にはわからなかった。