89×127


のっそり立ち上がったともやんが、教室の後ろのドアへ向かうと、そこにたどり着く前に動き出した影。


ただし、教室の中に入ってくるわけではなく、廊下をバタバタと走って行ってしまったようだ。



「あれ?」


「ほらーともやんがのんびりしてるからー。」


「オレのせいじゃなくない?……あれ?」


「なに、どうしたのさ。」



ドアを開けて廊下をのぞくともやんが、気の抜けた声を出した。



「いや、たぶんなんだけど…あれ、恭介かなぁ?」


中川くん?!
なんで彼がここに?

あの『気になさるな事件』の後、ひたすら逃げに逃げたあたしは最近久しく中川くんの顔をちゃんと見ていない。




だって、恥ずかしいし。

正面から直視したらパニックになること間違いなしなくらい好きだからな、あたし。



中川くん、あたしのクラスになんの用だったんだろうか?


あ、もしかしたら誰かに聞いてともやんに用事だったのかも。


大事な用だったらどうしよう。

悪いことしたなぁ。




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