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差し金



「いや、あの、昨日帰ろうとして昇降口に行ったら、真鍋先輩のお友達さんに話しかけられて、この教室で先輩と部長が勉強してるから行ってみれば、とか言われまして、言われた通り来てみたら、なんか、別れるとかの、話になってて、その、それで、」



なるほど。

これは渚さんの差し金か。




中川くんのことは遠目に紹介しておいたし、あたしが彼のことを好きだってことも渚さんは把握済み。


渚さんったら、この教室内にトキメキイベントを放り込もうってわけね!



「さすが渚さんだ!」


「…お前な、なんでこの流れで亀井が褒められるんだよ。完全にあいつ愉快犯だろこれ。」



ともやんが疲れた顔で言ったが、そんなことは百も承知であるのです。


渚さんはあたしのために中川くんを送り込んだんじゃない。



これはあたしが中川くんを前に慌てふためくことを狙った愉快犯である。



「でもそれは愛情の裏返しって信じてる!」


だってそう思わないと悲しいもん!





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