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お兄さんは、何よりも空の写真を好んで撮っていた。
青空だけでなく、雲の厚い薄暗い空も、稲妻の走る不機嫌な空も、柔らかい雪の降る穏やかな空も。
そして、お兄さんがその中でも一番好きだと言っていたのは今日のような綺麗な茜空と夕闇。
お兄さんと屋上で出会ってから、一度だけこんな空を見ることができたことがあった。
今思うと、あの空が、お兄さんが最後に見た茜と闇のグラデーションだったんだな。
無言でカメラを構え、闇の迫る夕空を長方形に切り取った。
あの時のお兄さんと同じように。
お兄さんは言っていた。
闇に染まる空はまた青く澄み渡る。
闇がなければ青空は輝かない。
夜が来なければ朝も来ない。
明けない夜はないとどこかで聞いたことがあるけれど、沈まない太陽もないってことを忘れちゃいけない。
『オレはこの一日一日が常に変化に溢れていることがこの世で一番綺麗なことだと思う。だからオレも、その変化を受け入れて、良いことも悪いこともすべてをここに残しておきたいんだ。それがオレの生きた証になると思うから。』