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「中川くんは、夕暮れが好きかい?」
「はい。なんか、物寂しい気もしますけど明日もがんばろうって思えるので、好きです。」
「さすがお兄さんの弟だね。」
お兄さんもいつも言ってたよ。
『今日もいい写真が撮れた!明日もがんばろう!』ってね。
あの時のお兄さんは、残りの命が短くなっているってこと、わかっていたはずなのに、毎日毎日『明日もがんばろう』って言ってたんだ。
まるで、自分に『明日もがんばるんだぞ』って暗示をかけるみたいに。
最後に屋上であった時だって、やっぱりお兄さんは言った。
明日もがんばるって。
あの時、お兄さんがどんな気持ちでその言葉を言っていたのか、あたしにはわからないけど、『明日もがんばる』って言って笑うお兄さんは、とても輝いて見えたんだよ。
「兄が…?」
「うん。お兄さん、今日みたいな空が一番好きだっていってたよ。あと、明日もがんばるって。」
「そう、ですか…あの、今撮った写真、俺にも焼き増ししてくれませんか?」
「うん、もちろんだよ。」
「ありがとうございます。」
そう言って笑った中川くんは、やっぱりどこかお兄さんに似ていた。