89×127
階段
「オレが嫁さんと会ったのは大学の頃だ。大学のサークルが一緒だったんだよ。」
「へー、じゃあ大学の時からずっと付き合ってるんですか?」
「いや、最初は付き合ってなかった。というか、その頃は嫁さん他の奴と付き合ってたんだよ。」
「略奪愛?!」
そんな刺激的な恋愛してきたのかい松下たつのり!
今ちょっと尊敬したわあたし!
「…お前な、急に話が飛躍しすぎだ。ちゃんと最後まで聞け。」
「何だ違うのかい。」
「まあ、略奪とはいかないけど、あいつが弱ってる時に付け込んだってことはあるから、正攻法ではなかったわな。」
「弱ってた?」
「あぁ。嫁さんが精神的に弱っちまったときがあってな、そのときに畳みかけたんだよ。ダセェけど、そうでもしないとあいつぶっ壊れちまいそうだったからさ…」
そういう松下たつのりはなぜかすごく寂しそうな顔をしていた。