89×127
夏休み中、部活をするみんなを取りに行くこともあった。
バスケ、水泳、野球、管弦楽、陸上、演劇、ダンス、そのほかにもいろんな部活に顔をだした。
サッカー部にももちろん行ったさ。
そこだけ行かないのは不自然だから。
でも、やっぱりあんまり近くにはいけなかったんだよね。
校庭で練習してるときに、少し離れたところから一回、三年生の引退試合に一回、計二回だけ。
しかも練習中と試合中にこっそり行って撮っただけだから、何人かとしか言葉は交わさず、休憩に入る前になにかと理由を付けて帰ってきてしまった。
中川くんとは一切話していない。
でも、まだ忘れられてないんだよね。
まだ好きなんだ。
だからかな、勝手にレンズは中川くんにピントを合わせて、写真嫌いだった彼をとてもきれいに写した。
プレイに集中する中川くんはやっぱりかっこよくて、でもなんだか撮ってはいけないようにも感じて、中川くんが写っていた写真は何枚か消去してしまった。
あたしが自分で撮った写真を消去するのは珍しい。
ぼやけているわけでもぶれているわけでもない写真。
でもそれを見るとどうしても視界が歪んでしまうのだ。
まだ素直にいい写真だと割り切ることができていない証拠。
好きなのに消去しなきゃいけないなんて、なんて残酷なんだ。
この気持ちも、カメラみたいにボタン一つで消去できたらよかったのに。