89×127

夏休み中、部活をするみんなを取りに行くこともあった。

バスケ、水泳、野球、管弦楽、陸上、演劇、ダンス、そのほかにもいろんな部活に顔をだした。



サッカー部にももちろん行ったさ。

そこだけ行かないのは不自然だから。


でも、やっぱりあんまり近くにはいけなかったんだよね。


校庭で練習してるときに、少し離れたところから一回、三年生の引退試合に一回、計二回だけ。

しかも練習中と試合中にこっそり行って撮っただけだから、何人かとしか言葉は交わさず、休憩に入る前になにかと理由を付けて帰ってきてしまった。

中川くんとは一切話していない。



でも、まだ忘れられてないんだよね。
まだ好きなんだ。

だからかな、勝手にレンズは中川くんにピントを合わせて、写真嫌いだった彼をとてもきれいに写した。



プレイに集中する中川くんはやっぱりかっこよくて、でもなんだか撮ってはいけないようにも感じて、中川くんが写っていた写真は何枚か消去してしまった。


あたしが自分で撮った写真を消去するのは珍しい。

ぼやけているわけでもぶれているわけでもない写真。


でもそれを見るとどうしても視界が歪んでしまうのだ。

まだ素直にいい写真だと割り切ることができていない証拠。



好きなのに消去しなきゃいけないなんて、なんて残酷なんだ。

この気持ちも、カメラみたいにボタン一つで消去できたらよかったのに。



< 160 / 243 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop