89×127

その後、クラスのみんなとワイワイやりながらその風景を相棒に収めたり、ふらーっと他のクラスに顔を出しては相棒を構えた。


こういう祭りは準備が一番楽しかったりするんだよね。

そして準備を楽しんだ分だけ片づけが寂しくなるもんだ。



みんなが生き生き張り切っている姿は、夏の日差しに負けないくらいきれいに輝いていて、色鮮やかなこの毎日にあたしも参加できていることが嬉しい。


ふと、生徒手帳の中の写真を手に取る。


生徒手帳の中には二枚の写真。


一枚はあたしの宝物。
もう一枚は彼に届けてあげたかったあの夕暮れ。



中川くんに恋をすることを止めようと決めたあの日から、宝物であるお兄さんとのツーショットの写真を眺める時間が増えたように感じる。



別に、お兄さんに会いたいとか、やっぱりお兄さんのことが好きとか言うつもりはない。


いやもちろん、会えるものなら会いたいし、お兄さんのことは相変わらず好きだけど、それはもうとっくに区切りがついている気持ち。



そうじゃなくて、なんか、この写真を見てると自分が見えてくるっていうか、本当の自分は何をしたくて、何が好きなのかを再認識させられるんだ。



あたしの生きがいは写真。

お兄さんと出会って、写真を教えてもらって、毎日の大切さを教わった。


この写真の中のお兄さんみたいに毎日全力で過ごしたい。



笑ってなくてもいいんだ。
全力でやったら、笑えない日もあるかもしれない。

全力で楽しんで、悲しんで、人を好きになって。


そしていつもたどり着くのは、やっぱりあたしは中川くんのことが好きだって言う気持ちなんだよね。



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