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次の日、なんだかやつれてぐったりしている松下たつのりの謝罪の言葉を受けたが、そんなに気にもしていなかったので適当にスルーしておいた。
いまだに中川くんのことを忘れられないなんてことは自分でもわかっていた。
それを松下たつのりにほじくり返されて、少し動揺しただけだ。
薄っぺらい心の表面で平気な振りはできるけど、心の奥底にはまだ気持ちが残っている。
そこに触れられて少しびっくりしただけだ。
「あたしこれからデートなので、さようなら」
「真鍋、これはデートじゃないぞ。買い物だ」
「なんでもいいから早くいこうよともやん。今日はなるべく早く帰って写真整理をしなきゃいけないんだから」
「わーったよ。じゃ先生、さようなら」
「気を付けて帰れよー」
ともやんと二人連れだって、少し大きめの花屋に向かう。
そのお店は可愛いフラワーアレンジメント?をやってくれるそうで、どうせお金もあるんだからと頼むことにしたのだ。
「オレ花の名前とか意味とか全然分かんないんだけど、選び方はお前に任せるからな」
「ともやん。あたしにそんなのわかるとでも思ってんの?わかるわけないジャン」
「じゃあどうすんだよ」
「何のためにお花の専門家のお店に行くと思ってんのさ」
「すべてお任せすればいいわけだな」
「そうなるだろうね。あたしの花の知識なんてみんなが知ってるメジャーなものばっかりだよ」
「よし、じゃあ花の名前ゲームでもするか。負けた方がアイスおごりな」
「本当にともやんはアホだなあ」
そうこう言いながらも、花屋に向かう道中、二人で出せるだけ花の名前を延々と出していくと言うだけのゲームをやってみた。
結果はあたしの圧勝だったけど、アイスをおごってもらえるということで、なんだか得した気分だ。