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それから、ともやんのことを意識するとは言っても、依然とたいして変わり映えのない日々を過ごした。
変わったのは、ともやんのことを意識して見るようになったことと、ともやんのことを知ろうとするようになったことくらいだ。
基本的にあたしは他人のことは我関せずなところがある。
わざわざ踏み込んでいろいろ聞いたりはしない。
でも最近はともやんのことを少しずつではあるが、わかってきた。
内容は家族構成とか、誕生日とか、家で飼ってる猫のこととか、本当に他愛のないことばかりだけど、あたしにとっては前進だ。
「先生の披露宴のことなんだけどさ、みんなで制服で行く感じだよな?昨日サッカー部の奴らに聞かれてさ」
「そうなると思うよ。あたしは基本的にカメラもって動き回るから、ドレスとかじゃ動きづらいしね」
「そうか。もうあと一週間か」
「たのしみだよね。早くあたしが作ったスライドを見せてやりたいわ」
「それってオレもまだ見ちゃダメなの?」
「ダメに決まっておろうが。当日のお楽しみだからね」
先生の結婚披露宴が一週間後に迫った今日も、ともやんと二人で放課後の空いてる教室で勉強していたりする。
というのも、模試の結果が思わしくなく、勉強を教えてくれと頼まれてしまったのが原因だ。