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再会
「ひかり、準備できた?」
「ま、待って!USBもったよね?カメラも持ったし、忘れ物 ない?」
結婚披露宴当日、渚のおうちの車で渚と一緒に会場に向かうことになっていたため、渚が我が家に来ていた。
渚ママはうちのお母さんと談笑中だ。
最後の確認をして会場に向かうと、そこにはすでにともやんをはじめとするサッカー部組と、うちのクラスのじゃんけん勝ち残り組が到着していた。
「二人ともおせーぞ」
「ひかりがもたもたしてるんだもん」
「受付まではまだ時間あるもんねーだ」
渚に「お手洗いに行ってまいります」と一声かけて輪から離れたのだが、お手洗いから出たところで、中川くんと出くわしてしまった。
そういえばさっきの集団にはいなかったな。今ついたのか。
「…中川くん、おはよう」
急な登場に心の準備ができていなかったため、心臓を急稼働させることになってしまったが、二人になれるチャンスなんてそうこないと思い、思い切って声をかけることにした。
「ちょっと、時間いいかな?」
ずっと鞄に入っていた写真。
今やっと渡す時が来た。
「真鍋先輩、なんか、久しぶり、ですね…」
「そうだね…あ、のさ、これ、ずっと渡せなかったの、今渡すね」
それはいつかの帰り道、一緒に見上げた夕暮れの空。
昼間が闇に侵される瞬間。
お兄さんが一番好きだと言っていた、目の前の彼も同じように好きだといった景色。
これだけ渡せなかったのが、心残りだったんだ。