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「ずっと渡そうと思ってたんだけどね、なんか、タイミングつかめなくってさ」
これが、彼との最後のつながり。
これで、本当に終わりにする。
中川くんの手に渡った写真は、文化祭でも使わない、ここだけのもの。
どうしてもみんなの目に見せたくなかった。あたしの変な我が儘だ。
「これ、あの時の……」
ともやんもいれて、3人で歩いた帰り道。
あの時はこんなことになるなんて思ってもみなかったなぁ。
中川くんのことが好きで好きで、隣にいるだけで高揚した心は、今はただ悲しく痛むだけだ。
「そう、あの時の。ちゃんと渡せてよかった…じゃあ、あたしもう戻るね。松下たつのりのことからかってやらないとだからさ!」
「あ、の…!」
痛む心は見ないフリをして、呼び止められる声は聞こえないフリをした。
無理やり笑顔を張り付けてその場を離れる。
これで終わり。
君のことを想うのは、もうおしまい。