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土曜日。
サッカー部でもないのにベンチにお邪魔してるあたし。
「ここって関係者以外立ち入り禁止じゃないんですか?」
「練習試合だから大丈夫だろ。一応関係者だし。」
ジャージの松下たつのりがめんどくさそうにそう言った。
「真鍋がいると、あいつらも気合い3割増しだしな。」
「あの、昨日からともやんも同じようなこと言ってたんですけど、なんで気合い3割増しなんですか?」
部活版松下たつのりもしっかり相棒に納めながら聞くと、レンズの向こうで呆れた顔をする被写体。
「あいつら、単純馬鹿が多いだろ?カメラマンがいるとかっこつけたくなっちゃうんだと。自分の勇姿を納めてくださいってな。」
ほほう、なるほど。
要は、カメラにかっこよく撮られるためにがんばってプレーしちゃう訳ね。
道理でさっきから自己アピールが多い子ばっかりだと思ったんだよ。
「そんなんしなくたってかっこいいのに。」
真剣って、ものごっついかっこいいんだぞ。
「それ、あいつらに言ってみろ。調子乗るから。」
松下たつのり30歳(推定)は、なんだかんだ言いつつもちょっと楽しそうに笑った。