89×127


土曜日。

サッカー部でもないのにベンチにお邪魔してるあたし。



「ここって関係者以外立ち入り禁止じゃないんですか?」

「練習試合だから大丈夫だろ。一応関係者だし。」


ジャージの松下たつのりがめんどくさそうにそう言った。



「真鍋がいると、あいつらも気合い3割増しだしな。」


「あの、昨日からともやんも同じようなこと言ってたんですけど、なんで気合い3割増しなんですか?」



部活版松下たつのりもしっかり相棒に納めながら聞くと、レンズの向こうで呆れた顔をする被写体。


「あいつら、単純馬鹿が多いだろ?カメラマンがいるとかっこつけたくなっちゃうんだと。自分の勇姿を納めてくださいってな。」


ほほう、なるほど。
要は、カメラにかっこよく撮られるためにがんばってプレーしちゃう訳ね。

道理でさっきから自己アピールが多い子ばっかりだと思ったんだよ。




「そんなんしなくたってかっこいいのに。」



真剣って、ものごっついかっこいいんだぞ。


「それ、あいつらに言ってみろ。調子乗るから。」



松下たつのり30歳(推定)は、なんだかんだ言いつつもちょっと楽しそうに笑った。




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