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披露宴が終わって、みんなが会場から出ていく中、あたしと渚はある女の人に引き止められた。
先程の披露宴で花束をもらっていた人ってことは、二人のご家族の誰かってことだろう。
…やっぱ怒ったよねー。
披露宴をぶち壊したと怒られても仕方ないことをやらかした自信はある。
怒られる覚悟もできてる。
「あなたたち、たつのりの生徒さんなんだよね?」
この方は松下たつのりのお母様だろうか?優しそうな人だなー。
「そうです…あの、本当にすいませ…」
「謝らないで。あなたたちに感謝してるんだから」
「…へ?」
怒られるようなことはしても、感謝されるようなことは一切していないぞ?
「あのスライドショー、すごく素敵だった。あの写真はあなたが撮ったものなの?」
「あ、はい…全部私が撮りました」
「すごくきれいな写真を撮るのね」
「あ、りがとうございます…」
「それにあなた。あの啖呵の切り方は素晴らしかったわ。イライラしてたのがスッとした」
渚に向き合ったお母様は、怒るどころかすごくいい笑顔ですごいことを言っていた。
あれおかしいな、この優しそうなお母様から渚と同じ匂いを感じるような…気のせいかな。
「あのお祭り気分の馬鹿どもをどうやって黙らそうかってずっと考えてたんだけど、さすがに息子の披露宴でそんなことできないでしょ?だからどうしようかなって思ってたところだったの。あなたが私の言いたいことを全部代弁してくれたから助かったわ」
うん。気のせいじゃなかったみたいだわ。