89×127
5枚目
指令
「これ、美雪さんに渡してください」
あの披露宴のあと、渚にはきちんと美雪さんとのことを話した。
お兄さんの病室であったことも、あたしの宝物であるあの写真を渡してくれたのが美雪さんだっていうことも。
ただ、美雪さんとお兄さん、そして松下たつのりの関係はまだはっきりとした話ではないから、ちゃんと本人に聞いて確認が取れたら話すということを渚に伝えた。
あと、あの日あたしと中川くんの間であったやり取りも、それとなく渚には言ってある。
もう、終わりにするって言うことも。
渚はどんな選択をしても応援すると言ってくれたから、なにも心配はしていない。
後悔だけはするなとは言われてしまったが。
「なにこれ?」
「あたしからのラブレターです」
今は、松下たつのりに美雪さん宛のお手紙を配達するよう交渉中である。
会場からでるときに言われた約束をあたしはしっかり覚えていましたよ。
「お前な、オレの奥さんたぶらかさないでくれる?」
「ふはは きっとあたしの魅力にメロメロになりますよ」
「メロメロって表現ひさしぶりに聞いたな」
「そこは今重要な所じゃないから掘り下げてはいけない」