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わが校の文化祭はもうあと1か月を切るまでに迫っている。
10月の半ばに行われる文化祭に向けて、どのクラスも切羽詰って準備を進めているようだ。
ともやんのクラスもすごく忙しそうで放課後の勉強もあまりできていないが、それに対してあまり寂しさを感じていないというのは、つまりそういうことだろうか。
ともやんを意識して見るようにはしていたが、そんなものは本来ならば自分がわざわざ意識しなくても意識せざるを得なくなるモノであり、あたしが今やってることはなんなんだろうと疑問に思ってしまった。
ともやんといるのは楽しいし楽ではあるが、それだけなのだ。
あたしが中川くんに持っていた気持ちは、もっと心臓が痛くなるような、それでいて心が温かくなるそんな不思議な感覚だった。
ともやんに感じるそれとは、全く違う。
そのことに気づいたとき、やっぱりともやんではダメなんだなと感じた。
中川くんと比べるのは違うと思うけれど、やっぱりともやんはあたしにとってイイ友達で、仲間なのだ。
それ以外のなんでもないのだ。
「ひかり?なーんかぼーっとしてる」
「考え事ー」
「ひかりが考え事なんて珍しいね。なんかあった?」
「いーや、あえて言うなら何もなかったってことがあったかな」
「……?変なひかり」
「そんなのいつものことじゃん」
「まぁそれもそうか」
「そんな簡単に納得されると納得いかないよ!」
「はいはいうるさいうるさい」
渚さんは今日も手厳しかった。