89×127
その週の土曜日、あたしは落ち着いた雰囲気のカフェの一席で一人そわそわしていた。
渚と行くのはもっぱら騒がしいファミレスで、こんな静かな空気に慣れていないあたしは、得意の落ち着きのなさをそれはもう惜しみなく発揮している。
「ひかりちゃん、お待たせ!」
そわそわきょろきょろを繰り返していたら、前方から美雪さんがかわいらしい笑顔とともに現れた。
そう、今日は松下たつのりの奥様、美雪さんとのデートなのだ。
この間松下たつのりに渡したラブレターは無事に美雪さんのもとへと配達されたようで、その日のうちに美雪さんから連絡があった。
せめて連絡があっても次の日だろうと油断していたあたしは、それはそれは盛大に驚き、机の角に小指をぶつけたよ。
あれは痛かった。
そして今日、こうやって会ってお話するに至ったのだ。
「ぜ、全然待ってないです!」
こうやってこの人と話をするのは正確にはまだ3回目なのだか、すごくフレンドリーで逆に緊張する。
渚も綺麗だけど、この人はまた違った美人さんだからなー。緊張もするよなー。
店員さんにコーヒーとカフェオレをそれぞれ注文し、一息つく。
…美雪さんにものすごくじろじろ見られている気がするのは気のせいだろうか。