89×127
「あ、あの、これ見てください。」
かばんの中をあさり、生徒手帳を取り出す。
ついこないだまで二枚の写真が挟まっていたそこに、今は一枚のツーショット写真しかない。
夕暮れの写真はもうあるべき人の手に渡ってしまったから。
「この写真…」
「ずっと持っていたんです。約束ってわけじゃないですけど…」
美雪さんに渡した写真には今よりずっと小さい、美雪さんの記憶の中のあたしとお兄さん。
「あたしの宝物です…え、美雪さん?!」
その写真を見て、数秒固まったと思ったら、急にぽろぽろ泣き出した美雪さん。
「ご、ごめんね…なんか、久しぶりに、こんなに笑顔の優介みたから…」
ハンカチで目元をおさえる美雪さんはそれから何も言わず静かに涙を流した。
あたしはそれを、ただ見ていることしかできなかった。