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しばらくすると、写真をあたしの前において、顔を上げた美雪さん。
「あーいっぱい泣いちゃったなー」
まだその瞳はかすかにうるんでいるけど、もう涙をこぼすことはなかった。
「私ね、あの頃、優介と付き合ってたの」
「それは、はい。なんとなく、そうなんだろうなーって思ってました」
「もうね、あの後大変だったのよあたし。精神的にガッタガタのボロボロでさ」
「それで、松下たつのりが…」
「そうそう、たつがね、支えてくれたの。本当にあのときたつに助けてもらわなかったら、私はダメになってたと思うな」
「…美雪さんは今、幸せですか?」
あの日階段で松下たつのりに聞いたのと同じ質問を繰り返す。
「幸せ。すごく幸せだよ」
「お兄さんのことは…」
「優介のことも、悲しいことだけど今のあたしを形作る一つの成分だよ。なかったことにするつもりはないし、そんなことしたら優介に怒られちゃう」
どこか遠くを見つめる美雪さんの目には、お兄さんの姿が映っているのかな。
「今こうやってひかりちゃんと再会してお話しできるのは、優介のおかげであり、たつのおかげでもある。私は、この巡り合いに感謝してるし、後悔なんて絶対しないよ。だって、今がすごく幸せだから」
そうしてニッコリ笑った美雪さんに、安心した。
松下たつのり、美雪さんは幸せだってさ。
だから心配することなんてなかったんだよ。