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その後、渚とともやんとさよならして、荷物をもってサッカー部へ向かった。
隣には中川くん。
昨日の今頃はこんなことになるだなんて考えてもみなかった。
「…中川くん、ごめんね、こんな部活遅れちゃって」
「平気ですよ。どうせ行っても怪我のせいで軽くしか練習させてもらえないと思うんで」
「そっか…あ、あのさ、」
「はい?」
「あの、かなーり今更なんですけど…あたしと、お付き合いしてくれますか?」
今朝、お互いの気持ちがわかった。
さっき、こんがらがっていたものがきれいに解かれた。
でも、これだけは聞けていなかった。
二人の前で話す話でもないし。
「あ、うわぁー……俺、最悪っすね」
「え、何が?!」
「…ごめんなさい!」
「え…ごめん、なさい?」
「あーあー!違いますよ!そのごめんなさいじゃなくて!俺から、言いたかったです、先輩に言わせるなんて……先輩!」
「は、はひ?」
「俺と、付き合ってください。いろいろ遠回りしましたし、たぶんこれからもいっぱい勘違いとか、すると思いますけど、俺は先輩のことが好きですから、先輩も俺のこと信じてくれませんか?」
「なんだ…断わられたのかと…あたしも、たぶん、すぐ勘違いするし面倒臭いとこもいっぱいあると思うけど、よろしくお願いできますか?」
「もちろんです!こちらこそ、よろしくお願いします!」
そう言って顔いっぱいで笑った中川くんは、初めて中川くんにカメラを向けたあの時のようにキラキラ輝いていて、あたしの胸を幸せでいっぱいにしてくれた。