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「聞いてねぇよ!」
と叫ぶ旦那の横っ腹にグーパンチを入れる嫁。
通訳するなら「うるせぇよ」だろうな。
だんだん可哀想になってきたので素直に話してあげることにしましょうか。
「あたし、小さい頃ちょっと病気してて、入院してた時期があるんですよ。その時にお兄さん、優介さんに出会いました。で、そこで美雪さんにも会いました」
「そ、うだったんか…だから披露宴の時…あ、お前のカメラって」
「お兄さんの影響ですね」
あたしがお兄さんと関わっていたこととか、美雪さんと顔見知りだった理由とかこれで一気に解決したのだろう。
ふんふんと頷きながら何か考えている。
「なんつーか、世間って狭いな」
「それは確かにそうですね」
いろんな人間がそれぞれの人生を歩んできて、その中で複雑に絡み合っていく。
あたしがあの時お兄さんに会っていなかったら、お兄さんに話しかけていなかったら今の関係は全くなくなっていたことだろう。
そう考えると、今のこの状態もとても不思議なご縁によってつながれたものなんだと思えてしまう。
「あたし、あの時お兄さんに話しかけて良かったなって思います」
だって、今のこの関係が、中川くんがいて、松下たつのりがいて、美雪さんがいて、もちろん渚やともやんがいて、本当に幸せだと思ってる。
そしてこの不思議な縁の始まりがあの日、病院の屋上で出会ったお兄さんなんだから、その出会いに感謝せずにはいられない。
そして同時に、この縁を繋いでくれた相棒の存在。
このカメラが、写真が、あたしたちを繋いでくれたんだ。