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渚とわかれ、中川くんと二人で歩く道のり。
「先輩、どこに向かっているんですか?」
「さぁーどこでしょうねー!」
目的地を告げずに歩くあたしに、文句も言わずについてきてくれる中川くん。
これが渚だったら、目的地を告げなかった時点で「はいさようなら」だっただろう。
まぁ、渚を連れていったところで意味はない場所なんだけどね。
あたしが向かっている先は、あの病院。
お兄さんとあたしが出会った、あの病院なんだ。
「ここは…」
病院が見えてきたところで中川くんも勘付いたらしい。
「勝手に連れてきてごめんね。ここまできて聞くのもなんだけど、平気?」
この病院はあたしがお兄さんと出会った病院であると同時に、お兄さんが亡くなった病院でもある。
「だ、大丈夫です…でもなんで、」
「ちょっとね、一緒に来てほしいところがあるんだ」