89×127
今あたしと中川くんは、病院の屋上、ちょうどあたしとお兄さんが出会った場所に立っている。
「ここでね、お兄さんに出会ったんだよ」
どうしても中川くんにはこの景色を見てもらいたかったんだ。
最後にお兄さんが切り取った景色を。
「ここで…」
「それでね、約束したの『毎日ここに来る』って」
お兄さんはじめて会った時は、カメラなんてまともにいじったことなかった。
写真は出かけたり行事がある時に記念に撮るものだって思ってた。
「お兄さんと毎日いろんな話をして、写真を撮ってるお兄さんを見て、あたしはお兄さんも写真も大好きになったんだ」
お兄さんの話は、小学生のあたしにとって難しい話もあった。
その分、今になってわかることもたくさんある。
夕暮れが好きだって話もそう。
「お兄さんとの写真もね、ここで撮ったんだ」
あたしの思い出、宝物。
つらいときはいつでも眺めていた。
「またここに来られてよかったなぁ。中川くんも一緒だし」
ここはあたしの思い出の場所で、お兄さんの生きた場所。
だから中川くんにも来てほしいと思ったんだ。