89×127
「……先輩、写真、とりませんか?」
「写真?」
「俺と、先輩。二人で撮りません?」
「二人で?!」
「はい。先輩、撮るばっかりで自分は全然映らないじゃないですか。うちの兄を見てるみたいです」
「あー、お兄さんも撮るばっかりの人だったんだもんね」
「まぁ、そんなのは口実で、ただ単純に先輩とのツーショットがほしいだけなんですけどね」
「なっ……!」
その言葉に唖然とするあたしを見て、おかしそうに笑った中川くんの笑顔は、あたしが初めてサッカー部の練習試合の時に見た中川くんの笑顔によく似ている。
そして、それと同時に、あたしが大好きだったお兄さんの笑顔にもよく似ている。
「兄さんばっかり先輩とのツーショットがあってズルいです。なので、俺とも撮りましょう?」
……なによその対抗心。
可愛いだろうがバカぁ!!
「でも、中川くん、写真苦手なんじゃ…」
「別に写真が苦手なわけじゃないですよ。先輩に会うまでは兄さんのこと思い出しちゃうからって嫌ってましたけど、今はもう平気です。むしろ、カメラがあったからここで兄と先輩が出会って、俺と先輩が出会えたとさえ思ってますから」
「中川くん…!」
まるであたしが美雪さんに話したのを聞いていたんじゃないかと思うくらい同じような考えをしてくれていた、そしてそれをあたしに素直に話してくれた。
それだけであたしは幸せだと思っちゃうんだ。
「…よし!撮ろっか!!」