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「まず、写真はサッカー少年がもってたのね。」
「うん。そう。」
「で、あんたさっきなんて言った?お兄さんの弟さん、だっけ?」
「そうなの、中川くんが、写真のお兄さんの弟さんだったの。」
「……なにそれ、世間狭ッ!」
「本当にびっくりしたよー。あの時病室で会ってたなんて思ってもみなかったからねー。」
お兄さんとお別れした日。
初めて行ったお兄さんの病室には、お医者さん、お兄さんのお父さんお母さんと、お姉さんと、もう一人あたしよりも少しだけ小さい子どもが一人いた。
あれが、中川くんだったんだろう。
あの時は自分のことで精一杯で、彼がどんな表情をしていたかとか、そういうことは全く覚えていないけれど、きっとお兄さんとの最後の時間を噛みしめていたんじゃないかな。