89×127
「へぇー、不思議なご縁だねぇ。
で、そのサッカー少年といろいろ話したと。」
渚さんはもはや聞く気があるのかないのか、美しい黒髪をくるくる遊びながらそう言った。
「お兄さんとの思い出話とかもろもろ。」
初めてお兄さんのことを真剣に聞いてくれる人ができてあたしは嬉しいんだ。
渚さんはちっともまじめに聞いてくれないから。
中川くんにも同じように言ったら、お兄さんの話をこうして他人と話すのは初めてですって、また笑ってくれた。
その笑顔にまたときめいた。
「中川くんさ、お兄さんのことすごく嬉しそうに話すんだよ。なんかそれ見てたらあたしもなんか嬉しくなっちゃって。」
確実にあたしの方がお兄さんと過ごした時間は短い。
たった2カ月。
それでも、中川くんに聞いてほしいことはいっぱいあった。
あたしの記憶の中のお兄さんは、あの写真のおかげで色あせることはないから。