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「渚。あたしさ、ずっと、お兄さんに出会えたことは運命だと思ってたんだ。」
「運命か。あんたそーゆーの好きだもんね。」
「うん。渚はわかんないって言うかもしれないけどね。」
渚は基本的に、目に見えないものは信じない人だ。運命しかり、幽霊しかり、占いしかり。
「別に、あたしだって、信じてない訳じゃないよ。ただ、そーゆうのに頼らないってだけ。
ひかりが運命だって思うなら、それは運命なんじゃない?」
なんでもなさそうに言うけど、渚はいつだってあたしのことを肯定してくれる。
もしあたしが間違えても、受け入れてから正してくれる。
それは厳しい言葉のときもあるけど、すべては渚の優しさから来るものなんだと思う。
だから、あたしはそんな甘ったれなあたしに付き合ってくれる渚が大好きだ。
「…あたし、今もお兄さんのこと忘れてないし、大好きだって言える。
でもさ、今は、中川くんの笑顔がね、お兄さんの笑顔に被っちゃうんだ。」