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「それは、仕方ないんじゃないの?
お兄さんとサッカー少年は兄弟なわけだし、似てるんでしょ?」
「んー、普段の顔はあんまり似てないんだけどね、雰囲気と笑顔が少し似てるかな。」
「なら、被っちゃっても仕方ないんじゃん?」
「でもさ、前はお兄さんを見てると幸せな気持ちになれたんだけど、今はお兄さん見てると中川くんが出てきちゃうんだ。」
そして、中川くんの笑顔を思い出して、幸せな気持ちになるんだ。
これが、何を表してるかくらい、あたしでもわかる。
「…そっか、ひかりもついに貴公子から卒業か。」
「王子様だって!それに、卒業って…。」
「卒業でしょ?」
「卒業っていうのかな?
お兄さんとのことは、あたしにとって大切な思い出で、宝物であることに変わりないし、それをあたしから切り離すことはできないよ?」
なにより、たくさんの幸せな気持ちをあたしにくれたお兄さん。
いないとわかっていても、街中でお兄さんに似た人を見たりすると無意識に目で追ってしまった。
気付くと写真を眺めている自分がいた。
それで、やっぱり好きなんだって思って、幸せな気持ちになって。
でも、もういないんだって思って、また悲しくなって。