89×127


ともやんが言っていることはいまいちよく分からなかったが、あたしは撮りたいモノが撮れればそれでいいやと思い直す。

難しいことはわからん。



松下たつのりのところに戻ると、そこには松下たつのりと話す中川くんがいた。


そう言えばさっきの輪の中にはいなかったな。



「あ、真鍋先輩。こんにちは。」


「こ、こんにちは!遅刻かい?」


「クラスの仕事が長引いちゃって、先輩がサッカー部に来るの、久しぶりですね。」


「そーなのよ、松下さんのせいで。」


「松下先生、先輩に何かしたんですか?」


「この男は極悪非道だからね。」


「ふふっ 松下先生って極悪非道だったんですか。あ、部長に気付かれちゃったんでもう行きますね。」


「うん、がんばって。」


「ありがとうございます。じゃあ行ってきます。」




松下たつのりと話していた顔をこちらに向けて、微笑みながら挨拶をしてくれた中川くん。

その微笑みにどぎまぎ返事をしたあたし。

柔らかく声をあげて笑った中川くん。

その笑顔に心臓が尋常じゃない動きをしているあたし。

爽やかに走っていく中川くん。

顔を真っ赤にして手を振るあたし。



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