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ともやんが言っていることはいまいちよく分からなかったが、あたしは撮りたいモノが撮れればそれでいいやと思い直す。
難しいことはわからん。
松下たつのりのところに戻ると、そこには松下たつのりと話す中川くんがいた。
そう言えばさっきの輪の中にはいなかったな。
「あ、真鍋先輩。こんにちは。」
「こ、こんにちは!遅刻かい?」
「クラスの仕事が長引いちゃって、先輩がサッカー部に来るの、久しぶりですね。」
「そーなのよ、松下さんのせいで。」
「松下先生、先輩に何かしたんですか?」
「この男は極悪非道だからね。」
「ふふっ 松下先生って極悪非道だったんですか。あ、部長に気付かれちゃったんでもう行きますね。」
「うん、がんばって。」
「ありがとうございます。じゃあ行ってきます。」
松下たつのりと話していた顔をこちらに向けて、微笑みながら挨拶をしてくれた中川くん。
その微笑みにどぎまぎ返事をしたあたし。
柔らかく声をあげて笑った中川くん。
その笑顔に心臓が尋常じゃない動きをしているあたし。
爽やかに走っていく中川くん。
顔を真っ赤にして手を振るあたし。