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「君は…。」


先生があたしを見てつぶやいた。


綺麗なお姉さんもあたしを見る。



「…ひかりちゃん?」


コクンとうなずくと、お姉さんがあたしを抱きしめた。何も言わずに。


身体を離すと、ニコッと笑いありがとうと言った。



あたしはそれが何を意味するのか分からなかったけど、すごく悲しくなって泣いてしまったのを覚えている。



お姉さんに手を握られ、あたしはお兄さんを家族の人と一緒に看取った。

あたしの初恋の人は綺麗な顔でこの世を去っていった。



ベットの上に飾ってあったおっきなコルクボードには、お兄さんが毎日切り取ったお兄さんの生きた証が残されていた。





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