ハルク
春ハ来ル3
「たく、なんなの?」

「すみません…」

お兄さんはキャップを被った頭を片手で掻いた。

おっさんは警察を呼ぶと言った男の人の一言に、舌打ちをし、どこかに去っていってしまった。

「余計なことしないでよ」

ぶっきら棒に私は言った。顔から火が出るくらい。この場から逃げ出したかった。

「ご、ごめんなさい…」

私を見て済まなそうに肩を落とした。

イライラと恥ずかしさで、頭に血が昇る。
こんな時、思いきり泣ければ、楽になるのにと思った。

「でも、ほっとけなかったんだ…」

お兄さんは顔を上げて私を見た。

「やっぱりお金で自分を売るなんて駄目だ。自分が傷つくだけだよ」

頭がガンガンする。眉間に皴が寄る。頭が割れる。


「…あのさぁ。何も知らないで適当なこと言わないでくれる?」

「え、ごめん」

ぽかんと口を開けて心底済まないという顔をした。
その表情が余計に私の心を曇らせた。

「変なこと考えてるみたいだけど…それは…絶対にないから…」

しばらくの沈黙。
お兄さんがこのまま黙ってくれることを祈った。

「ごめんなさい!!」

お兄さんはいきなり頭を下げて謝ってきた。

「え?」
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