ハルク
「ちょっと、本当になんなの?」

横を過ぎる通行人たちがチラリと私たちを見ていく。
最悪のパターンを想像した。手引きをしたのが、目の前のお兄さん…?

「…僕、人の心が聞こえるんです」

「は?」

想像を越えていた。
嘘っぱちにしては荒唐無稽すぎだ。

「何言ってるんですか?」
頭が更に熱を持って膨張する。

「…私の心を読んだってこと?」

「ごめんなさい!こんなこと伝えない方がよかったのかもしれない…」

頭を下げたままお兄さんは喋り続ける。

「だけどこのまま別れるのは絶対にいけない!って、思って…。あなたの心を勝手に読んでしまって本当にごめんなさい!」

混乱した頭で必死に理解しようとした。

心を読む?
このお兄さんが?

…駄目だ。理解できるわけがない。
< 14 / 33 >

この作品をシェア

pagetop