ハルク
「人の心が読めるんなら私の今の心の中、読んでみてよ!」

怒りで震えが止まらない。どうして怒りが沸いてくるか理由もわからなかった。
「…悲しい」

「は?」

「悔しい」

「……」

私は、黙って口をつぐんだ。そうなんだろうか。
ずっと考えないようにして蓋をして、私はずっと悲しかったんだろうか。悔しかったんだろうか。
考えもしなかった感情が次から次へと沸いてくる。

お兄さんは眉間に皴をきゅっと寄せてから私の目を見た。

「よく我慢してきたと思う」

そして目を伏せた。

「……本当なんなの…?」

悲しみじゃない。怒りでもない。涙が自然と込み上げてくる。
久しぶりの、涙。

「ごめんっ……やっぱ心読めないや」

心無く笑う口元。でも、眉間にはやっぱり皴が寄っていた。

「…やっぱりね」

「でもね、わかるんだよ。読めなくても人の心って。僕には伝わってきたよ、君の気持ちが…」

「……説教始めないでよ」

涙が溢れそうになる。必死に堪えて私も眉間に皴が寄る。

「うん、そっか、そうだね。ごめん…」
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