ハルク
雪ハ解ケル1
昼休み後の授業は窓からの暖かい陽射しが眠気を誘ってくる。4月終りの暖かい光は心地よい眠りを誘う睡眠剤。

英語の授業も単調で、余計に眠気が襲ってくる。

教室には黒板にチョークで文字を書く音が響いている。文字を書き終わると先生は教壇に置いた教科書を掴んで読み始めた。

眠い…
私を眠らせようとしているとしか思えない。

今日も英語の山崎は、同じ授業を繰り返す。教科書の会話文を読んだ後、いつものように同じ単語の発音を繰り返させる。

「はい、オッケイ」

山崎は満足そうに頷いて黒板に向き直した。

今は出来ていても、明日には忘れてしまってるだろう。

教科書を机の上に広げたまま、外の景色に目を移す。

10年後の私は英語を喋れるようになってるかな。そう考えてしまうのはちょっと意地悪なんだろうか。

スカートのポケットの中でスマホがメールの受信を知らせる。
前を見ると山崎は後ろを向いて黒板を書いたまま。チャンスと、ポケットに左手を忍ばせて受信メールを確認した。

『はるく』からのメールだった。
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